8月29日(木)同志社女子大学薬学部において、「アセチルサリチル酸(アスピリン)の合成と製剤化」というテーマで実験セミナーが行われ本校生徒13名が参加しました。
午前中は医薬品製造化学研究室の白井隆一先生のご指導の下、サリチル酸の粉末からアスピリンを合成し、それを結晶化する実験を行いました。午後からは生物薬剤学研究室の芝田信人先生のご指導の下、午前中に合成したアスピリンを製剤化し、溶出試験を行いました。今回の実験セミナーでは羽森真美先生、西村亜佐子先生、細野友莉菜先生、西原冴佳先生に加え、4名の学生(2名は香里卒業生)さんにもご協力いただきました。
午前の実験では、3人1組の班を作り、サリチル酸の粉末に無水酢酸と濃硫酸を加えて90℃のお湯で30分間加熱することで、アスピリンを合成しました。30分の待ち時間では、大学で使用している最先端の実験機器の見学をさせていただきました。その後、反応液を氷水で冷やしながらガラス棒でかき混ぜ、アスピリンの結晶を観察しました。できた結晶はブフナーロートという吸引ろ過装置(短時間でろ過を行える装置)を用いて回収しました。しかし、この段階で得られた結晶はまだ不純物を多く含むため、再度水に溶解し、加熱と冷却を行う再結晶により純度を高める作業を行いました。その後、結晶の秤量を行い、収率を計算しました。どの班も収率50%以上と初めてにしては上出来の結果になりました。また、アスピリンの結晶をエタノールに溶かしたものに塩化鉄(Ⅲ)水溶液を加える定性試験も行いました。材料であるサリチル酸は塩化鉄(Ⅲ)水溶液とまざると紫色に変色しますが、アスピリンは無色透明のまま変化がみられません。この実験についてもすべての班で期待通りの結果を得ることができ、アスピリンの合成に成功したことを確認できました。
午後からは合成したアスピリンを錠剤の形にする製剤化の実験を行いました。作製した製剤は、普通製剤と放出制御製剤の2種類です。普通製剤はトウモロコシ澱粉を含み、体内で速やかに溶け出すことで早く効果があらわれるという特徴があります。放出制御製剤はヒプロメロースという結合剤を含み、体内でゆっくり溶けて長時間効き目が持続するなどの特徴があります。この2タイプの材料をそれぞれ量りとり、乳鉢中で混和しました。その後、打錠剤機という機器を用いて錠剤を作製しました。多くの生徒は錠剤化の作業が非常に興味深かったのか、何度も錠剤をつくっていました。その後、普通製剤と放出制御製剤の性質の違いを確かめるため、溶出試験を行いました。溶出試験は六連式溶出試験機という装置を用いて行いました。この装置は6つのヴェゼル(容器)がついており、その中に緩衝液と製剤を入れて、時間ごとに溶け出した薬剤の濃度を測定することができます。今回は、薬剤を入れて0~120分後の溶出濃度を測定し、溶出率の計算を行いました。溶出濃度の測定では、紫外線μプレートリーダーという吸光度を測定する装置を使用しました。結果は期待通りの数値になった班や放出制御製剤のほうが溶出率の高かった班など様々でした。生徒たちは製剤の難しさを実感した様子でした。
今回の実験セミナーでは、本校では使用しない器具・装置を扱いましたが、丁寧に操作方法や原理などを教えていただき、無事実験を終えることができました。今回の経験が日々の学習のモチベーションにつながっていくことを期待しています。
◆生徒の感想
・なかなか大学生の方やOGの方とお話しする機会がないので、すごく楽しかったです。新しい自分が見たことのない機会に触れることができ、すごくいい体験になりました。
・普段、体験することのできない錠剤づくりや、実験が、とても楽しくよい経験になりました。
・普段に経験できないことができて良かった。大学生が優しく教えてくださって助かりました。
・錠剤をつくるのが楽しかった。
・もともと薬学部にいこうと思っていたけど、もっと行きたい!!と思うようになりました。スタッフの方もとても優しく、とても楽しい時間が過ごせて良かったです。
・初めて経験することばかりだったけど、詳しく教えてもらいながらできたので、とても楽しかった。特に粉を錠剤にするのが楽しかったです。
・薬をつくるのが楽しかったです。1つの薬をつくるにはとても時間がかかることがわかりました。
・普段生活している中で、体験できないようなことをできたのでとても楽しかったです。
・たくさんのことを教えていただき、化学がもっと好きになりました。
・薬学でどういう実験をするかが具体的にわかりました。
・薬学部って難しくて固いイメージがありましたが、実験は楽しく先生も優しかった。