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行事ニュース

3月8日(水)第72回高等学校卒業式

3月8日(水)午前十時より本校香真館にて第72回高等学校卒業式を挙行いたしました。

校長式辞

柔らかな春の日差しを浴び、厳しい寒さを乗り越え、春の息吹が感じられる季節となりました。希望と喜びに溢れるこの佳き日に、八田英二総長、理事長をはじめ、多数のご来賓の皆様のご臨席を賜りますとともに、保護者の皆様のご列席をいただき、ここに2022年度同志社香里高等学校卒業式を挙行できますことを、心より厚く御礼申し上げます。

本来であれば、卒業生の門出を皆さんで祝福すべきところですが、未だ収束しないコロナ禍により、ご家族の入場を制限させていただきましたので、ご臨席いただけなかった皆様には、オンライン配信で式典の様子をご覧いただくこととなりました。何卒、ご理解賜りますようお願い申し上げます。

ただいま、卒業証書を授与しました295名の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。心からお祝いを申し上げます。振り返れば、皆さんの高校生活は、突如出現した新型コロナウイルス感染症の拡大という未曾有の事態に直面し、様々な変化や制約を受け入れながらのスタートとなりました。緊急事態宣言が発令され、学校が全国一斉休校となり、6月の異例の入学式や分散登校、マスク生活、オンライン授業、試合や大会、学校行事の中止や変更と、これまで当たり前であった日常生活が一変しました。コロナ禍が皆さんの高校生活に与えた影響はあまりにも大きかったと思います。

このような状況に置かれながらも皆さんは、同志社の良心教育に基づく本校の教育をしっかり受け止め、それぞれの目標に向かって精一杯努力を続け、大きな困難を乗り越えてきました。皆さんのこれまでのたゆまぬ努力に、心から敬意を表したいと思います。

さて、これからの時代は、少子高齢化、高度情報化、グローバル化と、急激に且つ急速に変化し、不確実性の高い世の中になると言われています。また、地球資源の枯渇や自然災害の多発、今なお続くコロナ禍もあり、テクノロジーと自然の共存がキーワードとなり、既成概念では対応できない、新たな概念や価値観の創造が求められる社会へ変化しています。このような社会では、解決のための道筋や答えが一つとは限らない、それどころか、何が課題かもはっきりしないこともあるでしょう。皆さんには、自分でしっかり考え、正しい判断、選択をして、課題の解決に努めてほしいと思っています。

このような時代に生きる皆さんに、私からはなむけの言葉を贈りたいと思います。19世紀から20世紀にかけアメリカで活躍した詩人、Robert Frostの“The Road Not Taken”「選ばなかった道」という詩です。

Two roads diverged in a wood, and I-I took the one less traveled by,

And that has made all the difference.

よく人生は旅に喩えられることがあります。「ひとりの旅人が森の中を歩いていて、分かれ道にさしかかる。どちらかの道を選ばなくてはならない。それぞれの道の行く先を眺めてみるが、その道はどちらも曲がっていて先は見通せない。どちらも同じようなものだけれど、あえて人通りの少なそうな道を選んだ。もう一方の道は、いつかまたここに来るときまで取っておこう。心のどこかで、もう二度と戻ってこないかもしれないと思いながら。あの時、この道を選んだことで、どれだけ人生が変わったことかと、後に話すだろう。こんな内容です。この詩の最後で、旅人は、人通りの少ない道を選んだことが全てを変えたと感慨深げに語りかけています。それが後悔なのか、それとも人と違う生き方ができたという喜びや満足感なのかは、人によって解釈は様々です。

皆さんも「あの時、別の選択をしていたらどうなっていただろう」と思うことはないでしょうか。人生は、小さなことから、一生を左右するような大きなことまで、常に選択の連続です。私は、物事の選択や意思決定は自分の判断で下すべきだと考えています。それが、自分の人生に責任を持つことだと思っているからです。自分で決断したからこそ、困難に立ち向かうことができます。人に決めてもらった場合、う

まくいかなかったときに、人のせいにしたり、踏み留まって頑張ったりできません。

同志社を創立した新島襄先生も大きな選択、決断を下して、壮大な夢を実現した人です。江戸時代の末期、聖書を読むことが許されていない時代に、ひっそり隠れるように聖書を読み、神の御言葉に希望を見出し、さらに、神の摂理を信じ、孤独と闘いながら様々な困難に挑戦し続ける姿を描いた冒険小説、「ロビンソン・クルーソー物語」に感銘を受け、先生は渡米の願望を募らせました。そして、1864年、意を決し函館から脱国しました。当時、外国に出国することは死刑でしたので、先生の人生の選択は計り知れないくらい大きなもので、誰もが選ばない道だったと思います。しかし、この選択があったからこそ、同志社が創立され、皆さんも同志社香里で高校生活を過ごすという選択をしたので、ここで出会うことができ、今日この時を迎えています。

卒業生の皆さんには、この先、生き生きと悔いのない人生を送るために、色々なことに挑戦し、学び、考え、自分で決断し、時には選択しなかった道の先に、どんな未来が待ち受けていたのだろうかと思いを馳せながら、実り豊かな人生を切り開いていってほしいと願っています。卒業生の皆さんの限りない前途を祝福するとともに、今後のご健勝とご活躍を心から祈念しています。

最後になりましたが、保護者の皆様にお祝いとお礼を申し上げます。本日はお子様のご卒業、誠におめでとうございます。お子様の健やかな成長を願って支えてこられた皆様には、さぞや苦労も多かったことでしょう。今日の佳き日を迎えられ、立派に成長されたお子様の姿に感慨もひとしおかと存じます。教職員一同、心よりお慶びを申し上げます。コロナ禍における教育活動では、多くのご迷惑とご心配をおかけいたしました。今日まで本校にお寄せいただきましたご支援とご協力に深く感謝を申し上げます。今後とも本校の教育に益々のお力添えを賜りますようお願いを申し上げまして、式辞といたします。

それでは、卒業生の皆さん、また会う日まで、お元気で、ごきげんよう。

2023年3月8日

同志社香里中学校・高等学校

校長  瀧  英次