8月29日(月)同志社女子大学薬学部において、「お茶の葉から取り出した薬の効果を実験動物で確認する」というテーマで実験セミナーが行われ本校生徒6名が参加しました。
午前中は生薬学研究室の中村憲夫先生と足立真喜奈先生のご指導の下、茶葉からカフェインを抽出する実験をし、午後からは病態生理学研究室の漆谷徹郎先生、水川裕美子先生、天ヶ瀬葉子先生、髙鳥悠記先生のご指導の下、抽出したカフェインなどの薬品をマウスに投与し、その薬効を調べる実験をしました。今回の実験セミナーでは香里出身の安藤美菜子さん(博士課程2年生)、西原冴佳さん(大学5年生)にアシスタントとしてご協力いただきました。
午前の実験では、2人1組の班をつくり、持参した茶葉30gからカフェインを抽出する実験をしました。まず始めに、加熱したアルカリ溶液に茶葉を入れ、10分間放置し、この液をガーゼで絞って溶液のみを三角フラスコにとります。これを十分に冷やした後、分液ロートに入れ、そこにクロロホルムを加え攪拌します。するとカフェインはクロロホルム層に、その他の物質は水層に溶けるため、そこから(カフェインのみが溶けた)クロロホルムをとりだします。そのクロロホルムをエバポレーターで濃縮乾固し、クロロホルムを蒸留すると、カフェインの固体が出てきます。最後の仕上げとして、カフェインの昇華性を利用し、加熱・冷却すると、きれいなカフェインの結晶を得ることができました。実験操作の過程で、分液ロートやエバポレーターなど本校では使用しない器具・装置を扱いましたが、ていねいに操作方法、原理などを教えていただき、すべての班でカフェインの結晶を得ることができました。
昼休憩をはさみ、午後からはマウスの強制水泳の行動観察実験を行いました。これは、マウスを水槽に入れ泳がせる実験で、水に入れられたマウスはふつう、不安から必死になってもがく(おぼれることはありません)のですが、そのうち疲れとともに泳いでも無駄だというあきらめ気分となり、泳ぐのをいったん止め(無動作状態)、そして再び泳ぎ出すという行動をとります。実験では各班に4匹のマウスが与えられ、それぞれのしっぽに区別するためマジックでしるしをつけ、時間差で生理的食塩水(対照)、午前中に抽出したカフェイン(中枢興奮薬)、ジアゼパム(抗不安薬)、デシプラミン(抗うつ薬)をそれぞれのマウスに注射しました。そして投与30分後にマウスを水に入れ、5分間の実験時間のうち、無動作状態になるまでの時間と、無動作である時間(無動作継続時間)を計測しました。カフェインは、対照と比較して、無動作状態になる時間は長くなり、無動継続時間は短くなる結果が得られました。この結果は、カフェインの持つ中枢興奮作用が実験によって確認できたものといえます。ジアゼパムを注射したマウスは、不安を感じないため、泳ごうとせず、すぐに無動作状態となりました。デシプラミンはハイテンションにさせる薬なので、本来であれば無動作状態になるまでの時間は長くなり、無動作継続時間は短くなるはずですが、3班の平均値をとると本来の薬効とは異なる結果が得られてしまいました。無動作状態なのかどうかの判断の難しさ、動物を相手にしたときのデータをとる難しさも体感させられる結果となりました。
次にモルモットの摘出心房標本を用いたカフェインなどの薬物の効果を観察する実験をしました。漆谷先生がモルモットを手際よく解剖し、心房標本を作成し、それを栄養液で満たしたマグヌス槽につるし、そこに薬物を投与して、心房の収縮を測定する実験でした。残念ながら途中で摘出心房の動き止まってしまい、薬物の効果を確認するところまではいきませんでした。
最後に、漆谷先生より実験結果のまとめと解説、そして動物を使う実験についての意義についてのお話しをいただきました。命を犠牲にしての実習では、より多くのことを学び、吸収し、社会に還元できるようにならなければと参加した生徒は感じたと思われます。
◆生徒の感想
・カフェインを抽出したり、マウスで実験したり、モルモットの心臓、マウスの心臓を観察できてよかった。動物実験の難しさがわかった。
・カフェインを抽出できたとき、すごく嬉しかった。動物を使った実験では、ちょっと怖かったけど薬の効果を間近で見ることができてよかったです。自分たちの実験のために動物の命を犠牲にしたので、今日のことを無駄にせず、次に繋げていきたいと思いました。
・薬を使ったりして動物の実験は初めてで、とてもよい経験ができました。色々な作業ができて楽しかったです。
・カフェインを紅茶の葉から抽出したことが無かったので、興味深かったです。また、普段学校ですることができない実験を体験できてよかったです。
・初めて体験することだらけでとても勉強になりました。カフェインを抽出するのが難しく少しの量しか得られなかったけど、抽出できてよかったです。マウスの実験はしっかりした結果がでなくて残念でした。
・学校でも何回か動物実験を行なったことはありましたが、今回初めて生きたマウスに触れたり、モルモットから心臓を取り出すところを見たりしました。犠牲になった生命に対する感謝の気持ちを抱くことができました。