今日は晴天、ようやく青空を拝むことができました。Boston Trinity Academy(BTA)で過ごす最終日です。
昨晩、BTAの校長先生とお話をする機会に恵まれ、学校のことがあらためてよく分かりました。BTAは2002年に創立された新しい学校ですが、校舎は60年以上前に創立された別の学校のものを受け継いでいます。その学校は、第35代アメリカ大統領ジョン F. ケネディのお兄さんのジョセフ・ケネディさん(海軍パイロット)が1944年に第二次世界大戦で戦死したことを悼んで、お父さんが創立した Lt. Joseph P. Kennedy Jr. Memorial School という学校だったそうです。その後、その学校は閉鎖されて校舎を買い取った人たちがBTAを開校しましたが、BTAにも以前のままジョセフ・ケネディさんの肖像画が飾られています。
たいていの人が公立の学校で学ぶアメリカにおいて、あえて私立の学校を選ぶ理由は、特に優れた教育を受けるためか、宗教的な要素の強い教育を受けるためかの2種類だそうです。当然、公立校よりも学費がかかるので生徒は裕福な家庭の子女ばかりとなります。そうすると、富める者ばかりがよい教育を受けてより成功しやすくなり、社会の構造は二極化する一方です。
BTAの校長先生によると私立高校のうち進学校の学費は一般的に4万〜4万5千ドル、宗教系の学校の学費は2万〜2万5千ドルだそうです。BTAは高水準の教育を提供して卒業生を有名大学に送り込むことを目標にしている進学校なので学費が高くなりそうなものですが、あらゆる階層の家庭の子供たちによい教育を与えたいという理念に基づいて運営されており、学費を1万8千ドル以下に抑えて、奨学金制度も充実させているそうです。そのため、1週間弱しか滞在していない私たちでも、「いわゆるお金持ち学校ではないな」ということが雰囲気でわかります。慈善家たちによる巨額の寄付金で成り立っている素敵な学校です。ちなみに、生徒数は7学年で240人です。
話が私たちの研修旅行からそれているように思われるかもしれませんが、実はこれが今日の出来事を理解する上で必要な知識なのです。
さて、今日も香里生のための英語の授業3時間から始まりました。いつも勉強をしている片方の部屋が使えないのでチャペルで授業をしました。リンネル先生は、昨日みんなで訪れたボストン市内の名所について振り返ってくれました。ヒックス先生の授業では、場所がチャペルだったからかゴスペルを習って、頑張ってみんなでハモっていました。私が見学したときのラビアンカ先生の授業では、前に出ている人がお題の単語を英語で説明してみんなが当てるゲームをしていました。
3時間目の後は、みんなのお世話係の”buddy”と合流し、その子の授業について行きました。buddyの皆さんは、とっても親切です。「buddyをやりたい人ー?」という募集に応じた子達だそうですが、何かと気を配ってくれているのが見てとれます。
ところで、今日がどういう日だったか覚えていらっしゃいますか?今日は自分の家系の、あるいは他人の民族文化を表す服装をしてくる「文化の日」でしたね。
「文化の日」は民族の誇りを持ち、多様性の理解に努めることが目的だと思いますが、その手段には服装だけでなく食べ物も用いられます。保護者の方が各家庭の伝統料理をたくさん作って持ち寄り、全校生徒のために”cultural lunch”と銘打った立食パーティーを開催してくれました。大広間に様々な国の数えきれない種類の料理が並んで、まるでお祭り。私も心が踊りました。
正直、「この国はどこにあるんだったかしら」と思うような地域の食事もあって、一生その国を訪れることはないかもしれないのに、そこの国の血を引いた人が手作りした料理を食べていることに不思議な感動を覚えました。そして冒頭でも述べましたが、料理のラインナップを見て、BTAが非常に多様性に富んだ学校で、アメリカ社会ではマイノリティと呼ばれる人種、民族の生徒が多いということがたいへんよく分かりました。
それから、私としては、この万国博覧会ランチに日本の料理がないことをとても残念に思いました。(BTAには日本人の生徒がいません。)もしここに日本料理があったら、きっと皆さんに喜んでもらえるのに…と、我らが誇る和食を自慢したい気持ちが湧いてきました。そういう気持ちを持ったことが、この行事の意義を表していますね。
香里生たちは、カラフルな衣装に身を包んでいつもよりもテンションが高めのBTA生たちや人の多さに圧倒されてキョトキョトしていました。食事も無難な炒飯、韓国のキムチやチャプチェに走っている人が多かったですが、彼らにとってはホームステイの食事が常に異文化体験なので、ホッとしたい気持ちもわかります。
いつもより長い昼休みのあとは、再びbuddyの授業に同伴。その間、私たち教員はあることに必死だったので、授業風景の写真がありません。何をしていたかというと、BTAの皆さんに『飾ってもらえる寄せ書き』を作っていました。BTAでの交流プログラムは今年が初めてです。第1期生として、BTAと同志社香里の友好の証を何か残せたらと思い、桜の木をモチーフにした寄せ書きを作ることにしました。本来なら100%生徒たちが作ったらいいのですが、彼らは時間割に縛られていて作業ができないので、最低限の協力をお願いしました。最初の方の写真でお分かりのように、BTAは廊下の壁にたくさんの掲示物があります。ひょっとして私たちの寄せ書きも並んで壁に掛けてもらえないかなぁ、という淡い期待を抱いています。
午後に授業を2時間見学したあとは、buddyの皆さんとレクリエーションで「何でもバスケット」をしました。ビリになって英語でお題を言わなければならないのは恥ずかしい上に難しいので、みんな必死でした。
ゲームを終えたら、みんなで外に出て記念撮影をしましょうということになりました。そこで、その直前に「飾れる寄せ書き」を贈呈しました。慌ただしくて、同志社香里の生徒にきちんと完成品を見せられなくてごめんなさい。桜の花に一人一人のメッセージ、真ん中には “Wishing for a long friendship.” (長い友好を願って)と書いてあります。期待通り、 “We should hang this on the wall!” (壁に飾ろうよ!)というBTAの子の声が聞こえたので、もしそうなれば見るたびに私たちを思い出してくれるかもしれません。
写真撮影のあとに、いよいよbuddyに別れを告げます。ハグや握手をしてお互いに出会えたことを喜び合いました。続いて、チャペルにてBTAでのプログラム修了式が執り行われました。校長先生からのお話があり、リンネル先生が一人一人の名前を呼んで堅く握手をし、修了証を渡してくださいました。リンネル先生は毎日英語の授業を教えてくださっただけでなく、ボストン市内観光にも随行してガイドをしてくださり、BTAでの生活をすべて管理してくださっていました。中2の女子2名がホームステイもさせていただきました。修了式に出席していたオロコ先生もみんなのホストファミリーと密に連絡を取り合って登下校の時刻を把握し、みんなの安全を保証することに尽力しておられました。高1の女子2名のホストマザーでもありました。また、アシスタントのヴィクトリアさんも細かい事務作業を引き受けてくださったそうです。皆さん、本当にありがとうございました。
これでBTAのプログラムは本当におしまい、各ホストファミリーのお迎えを待つだけとなりました。「帰りたくなーい」と後ろ髪を引かれつつ帰る子がいる一方で、外で遊んで楽しく待っている子もいました。中3は男女一緒にケードロを始めたものの、制服に革靴という悪条件で5日ぶりに全力ダッシュをし、ものの数分でへばっていました。人数が減ってからはBTAの生徒と一緒にバスケットボールをした子もいました。ボール1つで言葉の壁を越えて一緒に楽しめるのでスポーツは素晴らしいですね。
ボストン交流プログラムのメインイベントであるホームステイとBTAでの学習が終わりました。あっという間に過ぎた気がしますが、日本にいるときの5日間とは比べ物にならないくらい濃さだったからこそ速く感じたのだと思います。最近、私たちと一緒にいるときでも生徒の口から英語が出てくるようになりました。伊丹に到着して「ウップス!」なんて言っていても笑わないでくださいね。