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行事ニュース

最先端科学入門講座(情報系)

2014年9月11日(木),香里生のための最先端科学入門講座が2件行われました。うち1件は,同志社大学理工学部から佐藤健哉先生(情報システムデザイン学科)をお迎えし,『インターネットの現在・過去・未来~米ソ冷戦からサイバー攻撃,そしてその先へ~』と題した講演を行っていただきました。コンピュータやネットワークが現代の中高生にとってはもはや身近なものであることを反映してか,高1から高3まで,40名近くの申し込みがあり,教室は大盛況でした。
先生からの「インターネット使ったこと,“ない”人?」の問いかけで始まった講座,これは見事に「ゼロ」という結果でした。とはいえ,ごく日常的にお世話になってはいるものの,どういうしくみで作動しているのか,そもそも「インターネットとは何なのか」を説明できる生徒は誰1人いません。先生のねらいはそこにありました。
先生は,「インターネットの源流」に生徒たちの意識をさかのぼらせていくような問いかけを,次々に重ねていきます。――「糸電話」って知ってる? 作ったことある人? 実は糸電話での会話の間に,情報の変換が2回行われている。これが現代の利器のすべての基礎になっている。「マイク」と「スピーカー」とは何なのか。電話も基本的にはこれらと同じ。初期の「電話」システムには,「電話交換手」という,人が担う役割が必要であった。米ソ冷戦時代であった1960年代,この「電話交換機」が軍事攻撃されるというのが,最もアメリカが懸念したこと。そこで,「万が一システムの一部が攻撃され,破壊されても,他で補って通信が続けられるようにしたい」「情報を小分けにして通信する方法」というのが,「インターネット」の発想の原点なのだ,ということ。
まさか「米ソ冷戦」のような社会的な背景があったことなど,思いもいたらなかった生徒が大半だったようで,先生のお話にどんどん惹きこまれていました。
二者間の「通信」の前提となっている「プロトコル」の概念の説明は少し難しかったようで,慣れない長時間連続の講義に,少し眠気がさしてきた生徒もちらほら。そんなころ,先生は1枚の動画を提示しました。なんと大量のミサイルが,世界中からアメリカ大陸に向かって打ち込まれている場面。「これ,現在進行形で起こっていることです」
この正体は,リアルタイムで「サイバー攻撃が行われている場所と量」を「見える化」したGoogle社のサイトでした。このマップは,後の感想にもあるように,少なからぬ衝撃を与えたようです。
「お,今日も活発に攻撃が行われていますね」「ハハハ…」「アメリカが攻撃をうけるのは日常茶飯事です」 思わず「すげー」「俺らも危ないぞ」という声が漏れます。「日本が集中して攻撃をうける日があります。それは中国からです。9月16日。何の日でしょうか? 満州事変の日です」
どうしてこのような現状があるのか。というのも,「インターネット」とは当初,研究者・科学者どうしの間のネットワークを目的として開発されたものだったから。セキュリティを重視するなど,開発する人がそこまで対策の必要性を企図していたわけではなかった。生徒たちは「なるほど」と納得の表情でした。「第1次世界大戦を〈化学による戦争〉,第2次世界大戦を〈物理学による戦争〉と見るなら,〈情報学による戦争〉つまり第3次世界大戦は,もう始まっているかもしれない」との論説に,生徒たちは真剣な表情で聞き入っていました。
さらに驚いたことには,「ハッキング・情報流出など,このようなサイバー攻撃の,個々の具体的な手口を実演して見せます」と言い出されました。そして,実際にプログラムを操るようすを目の前で見せてくださいました。不正情報取得の方法。IDとパスワードが暗号化されてないと,簡単に読みだされてしまうし,実は素人である私たちでもそれぐらいのことはできる。www.asahi.comと入力したはずなのに,なんと同志社香里のHPへ飛んでしまうなど,ファイルが書き換えられた結末をこっけいな例で示してくださいました。
最終章として,未来社会がどのようになっていくのかの予測を,話されました。今後は「互いにネットワークを結ぶ」ツールが「コンピュータ」だけにとどまらず,生活必需品にも拡大していくだろう。すでにその走りが,みんなの使っているスマートフォン。「たとえば自動車間のコミュニケーションが可能になれば,交通事故の未然防止への応用が期待できる」など,豊富な具体例とともに話されました。
また,このような未来社会の展望をうけて,同志社大学の情報系学科で何を学ぶことができるのか,現役学生の活躍ぶりをまじえながら,高校生がイメージしやすいように紹介してくださいました。
最後に,先生から語られたメッセージ。第3の時代,「情報社会の時代」の歴史はまだまだ浅く,50年程度。これからどう発展していくかはみなさんにかかっている。みなさんにお伝えしたいのは,広く社会のことに関心を持ち,大学で一生懸命勉強するのもよいけれど,積極的にその成果を社会に活かすこと,つながること。研究発表や,企業との共同,コンテストなどいろいろな手段が用意されているので,積極的に活用してほしい,ということでした。過去(源流),現在(新たな問題),未来の展望へと,筋道だったお話の直後ということもあり,先生からの熱いエールは,深く生徒たちの共感を呼んでいました。
とくに今回の講座は,聞きつづけるだけの受け身ではなく,講演の途中でも自発的に生徒どうし話しあったり,感想を述べあったりする光景がみられました。閉会後も,個人的に,将来の就職のことを含めた今後の進路相談などをしたいと,先生に話しかけようとする生徒が絶えませんでした。

アンケートから,代表的な生徒の感想を紹介
・目に見えないだけで,いろいろなところでサイバー攻撃が行われているんだなとびっくりしました。わかりやすいたとえがあって,よく理解できた。
・車の自動運転に興味を持った。情報で便利になっていく現在の社会には,私たち自身がわからないリスクがたくさんあるということが,よくわかった。
・今は情報社会になって,あらゆることが便利になっているが,危険もたくさんあるということ。情報系の講座に初めて参加したが,わかりやすく興味深い内容だった。
・情報系学科が,世間に想像以上に注目されていた点。
・サイバー攻撃は今もなおうけていて,もしかしたら第三次世界大戦が始まっているのだなぁということ。理解するのが難しかったけど,いろいろと参考になった。
・今と昔の電話システムの違いをしることができ,すごくためになった。今どの学部に行こうか迷っている中で,こんな講座があって,すごく参考になった。
・サイバー攻撃について,日常的に行われていることにとても驚いた。情報を使って,戦争をしているように思えた。情報の技術がどのように役に立つのかが,よく理解できました。
・世の中が便利になっている一方で,サイバー攻撃がたくさん行われていたこと。未来が楽しみだと思いました。
・情報系の学科の特徴がよくわかった。だいたいのイメージがつかめたと思う。
・同志社大学の学生チームが,プログラミングコンテストなどで優勝していることを知って,興味をもてた。基礎的なことから,学部のことまで聞けて,とてもよかった。
・誰でも簡単に不正情報を取得できるのはすごいと思ったし,とても危ないことだと思った。とてもわかりやすかったです。ありがとうございました。これからは,インターネットが大事になると思ったので,少し勉強しようと思いました。
・情報ってむずかしい…。でも,楽しそう。わかりやすい説明でした!!

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