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行事ニュース

電気系個別高大連携プログラム『ペットボトルの共鳴条件をオシロスコープで解析しよう』

実施:2015年6月11日(木)
講師:小山 大介先生(同志社大学理工学部・電気工学科,准教授)
TA:清水 裕貴さん(4回生,本校卒業生)

本プラグラムは,理工学部・電気系学科の先生方からの提案をきっかけとして始まったものであり,昨年度、好評を博しました。今年度もぜひにとのことで,開催が実現したプログラムです。生徒が大学に出向するのではなく,本校内で,実験体験をまじえた学部学科ガイダンスの機会に与れるということで,低学年の生徒にも敷居が低くいものとなっています。今年は,高校2年から16名,高校1年から15名,計31名の参加があり,約2時間の講座に真剣に臨みました。
講師としてお越しくださった小山先生ご自身,またTAとして常時生徒たちをサポートしてくださった清水裕貴さん,お二方とも本校の卒業生であるということで,生徒たちには非常な親近感がわいたようです。

講座は,電気工学科・電子工学科の概要と紹介から始まりました。どんなことを学べるのか,1回生から3回生にかけてどんな大学生活が待っていて,ゆくゆくは大学院への進学や就職にどのようにつながっていくのかを,高校生にも十分イメージできるように,わかりやすくお話しいただきました。とくに,「卒業研究」とはどんなものであるのか,「大学院」とはどういう学校か,1回生~3回生の授業でどんな「実験」をするのかなど,具体例にもとづいてていねいに説明されました。大変コミカルな語り口で,生徒たちは終始先生のお話にひきつけられ,ときおり笑いがもれる,和やかな雰囲気で進んでいきました。
また,研究室の紹介においては,「各研究室の名前を聞いても何のことかわからないでしょうね」というご配慮のもと,いまどきの高校生に最もなじみがある道具であろう携帯電話の通信速度向上にかかわる研究課題を例に挙げ,研究室の意義や,世の中のニーズとのつながりについて説得力のある説明をされました。その文脈上で,「君たちのお父さんお母さんが心配されるであろう,就職面は,電気系を卒業すれば万全です」と語られ,「大学・学部・学科選びをする際,学びたい内容から選ぶのもいいけど,その先どうするのかもあわせて考えたほうがよい」というメッセージを伝えられました。
「英語力がいるんですか?」よく聞かれる問い。「はい,これからの社会には絶対に必要です」「入社後,1~2年で海外へ派遣されることが,ふつうにあります。英語力に自信がないからと断ろうものなら,門前払いでしょう」と脅しをかけつつも,「英語力は,すぐに成果が数字にあらわれる分野。ぜひがんばって」と発破をかけられたのが印象的でした。生徒たちも真剣な面持ちで先生のメッセージを受けとめていました。

ここからは,本日の実験テーマの根幹をなす,「波動」「音波」の基礎知識の整理に入りました。高校1~2年生にとっては,いまだ十分に学習が進んでいない分野であることを勘案し,単調な講義とならないよう最大限の工夫を施してくださいました。「ウォーミングアップ」として「自分の声の波形をオシロスコープに通して見てみる」という導入では,「オシロスコープ」を初めて本格的に操作する新奇さもあいまって,大いに盛り上がりました。
本題は,「ペットボトル内の空気を共鳴させ,それをマイクに通してオシロスコープで観測した波形をよみとり,ペットボトルの形状と共鳴音の関数関係をわりだす」という高度なものでした。
最初の課題は,空のペットボトルを吹いて共鳴させ,その共鳴音の振動数をオシロスコープで測定してみる,そして理論値と比較してみるというものでした。初めから容積のわかっているペットボトルであるから,理論値予測は,単純に理論式にあてはめるだけであって,それほど難度は高くないはずです。ところが,生徒たちはさっそく四苦八苦。なぜなら慣れない√を含む計算であったり,単位の変換であったり,3~4つのステップを一つたりとも違えず,正確にこなさなければならないからです。班内でも人によって意見が異なって,議論になるというありさまでした。TAの清水さんは駆けずり回って大活躍でした。生徒たちの個々であまりに多様な解答に,「ここは先にこれを計算してしまった方がいいよ」「ケタをまちがえていないか,チェックしよう」など,その場で丁寧な助言や,ときには一緒になって悩むということもしていただきました。
班ごとに答を発表しあい,実測値と比較してみる時間となりました。「204になりました」「57なんだけど」「250000??」あまりのちがいに,「えー」「うそー」とどよめきの声が上がりました。一方,実測実験値は,200前後の値を示した。「私たちの班すごい! とても近いよ!」 小山先生も「理論値と実測値がピッタリ合った班は1班だけでしたね」と苦笑いでした。
ここからは最終の課題,水を入れながら「ペットボトル内の空気の容積」を自分たちでコントロールして段階的に変えていき,容積と振動数の関数関係を言い当てていくという,ちょっとした「研究」です。実験結果をプロットしてグラフを作成していき,理論式のあらわすグラフと比較してみるという,これも慣れない作業。「自分たちが今何を求めているのか,何を測っているのか」が常に明確に意識されていないと,ロボットのような単純労働と何ら変わりがなくなってしまいます。この点については,先生も清水さんも助言をしながら回られたことや,参加した生徒たち自身の意欲によるところもあり,心配には及ばなかったようです。生徒たちの表情は真剣で,さながら研究者の様相でした。
グラフを作成し終えた班から順次解散となりました。解散後も,自分の進路やこれからの学習のことについて,先生や先輩の清水さんに個別に相談をもちかける生徒もいて,講座の熱はおさまらない様子でした。

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