2022年度中学及び高校入学式を挙行いたしました。
中学校入学式式辞
うららかな春の光の中で、色とりどりの花が咲き誇る季節を迎えました。本日ここに、八田英二総長、理事長をはじめ、ご来賓の皆様、ならびに、保護者の皆様にご臨席を賜り、2022年度同志社香里中学校入学式を挙行できますことは、誠に大きな喜びであります。ご臨席の皆様に厚くお礼を申し上げますとともに、252名の新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。心より祝福を贈りたいと思います。
皆さんは、突如現れた新型コロナウイルス感染症の影響により、大きな不安やストレスを抱えての新しい生活様式での日常生活、さまざまな制約を余儀なくされた小学校生活など、本当に辛く、大変な二年間だったと思います。このような状況にありながらも、皆さんは、逆境をはねのけ、進学の準備をしっかりとされました。入学に至るこれまでの努力に、深く敬意を表します。
また、これまでずっと温かく支えてこられた保護者の皆様、立派に成長されたお子様の姿に、感激もひとしおかと存じます。本日は、誠におめでとうございます。併せて、本日は、感染の拡大防止のため、各ご家庭、お一人の参列とさせていただきました。これにより、この場にご参列いただくことがかなわず、オンライン中継にて、式の様子をご覧いただいている方もいらっしゃるかと思います。皆様のご理解とご協力に厚く御礼申し上げます。
今、皆さんの胸中は、入学の喜びと、これから始まる学校生活への不安の中に、将来への大いなる期待と夢で満ち溢れていることでしょう。これからは、夢と希望の実現に向けて、一歩、一歩、着実に、本校での歩みを進めてほしいと思います。同時に、この場にいることができるのは、皆さんのこれまでの努力の積み重ねのたまものであることは言うまでもありませんが、ご家族や周りの方々の支えや励ましがあってのこと、感謝の気持ちを忘れないでください。
さて、私から、今日、新たなスタート地点に立ち、夢の実現に向かって歩み出される皆さんに、ミッキーマウスの生みの親であり、ディズニーランドの設立者であるウォルト・ディズニーの言葉を送りたいと思います。彼は、夢を叶える秘訣として次のように語っています。
The special secret of making dreams come true can be summarized in four C’s. They are Curiosity, Confidence, Courage, and Constancy.
夢をかなえる秘訣は、4つの「C」に集約される。それは、「好奇心」「自信」「勇気」、そして「継続」である。
最初のCは、Curiosity「好奇心」です。 好奇心とは、物事を探求しようとする気持ち。様々なことにどうしてだろうと関心をもつことです。
二つ目のCはConfidence「自信」です。自信とは、自分の価値や能力を信じることです。自分になら絶対できると思えるくらいのしっかりとした準備ができなければ、自分を信じることはできません。
三つ目のCはCourage「勇気」です。勇気とは、困難や危険を恐れない心、ものごとに立ち向かう気持ちです。夢を叶えるためには、その過程でいくつもの困難に出合うでしょう。それらを乗り越えなければ夢を叶えることはできません。
最後のCはConstancy「継続」です。「継続は力なり」という言葉があるように、夢を叶えるには地道な努力の継続が必要です。夢の実現は、努力の積み重ねといっても過言ではないでしょう。そして、失敗しても、苦しくても、あきらめず努力し続けることで、それが自信となり夢の実現につながります。
ウォルトは、さらにこう続けています。
All our dreams can come true, if we have the courage to pursue them. I only hope that we don’t lose sight of one thing – that it was all started by a mouse.
夢を求め続ける勇気さえあれば、すべての夢は必ず実現できる。いつだって忘れないでほしい。すべては、一匹のねずみから始まったということを。
同志社を創立した新島先生は、13歳で蘭学を学びはじめ、このことがきっかけで算術や海外の事情への目が開かれたと言われています。また、大の読書家でもあり、当時禁じられていたキリスト教の書物や「ロビンソン・クルーソー」の訳書、自然科学の本などに深い感銘を受け、近代的な諸外国の存在が脳裏から離れなくなったと言われています。中でも、アメリカの歴史や政治、経済、文化等を書いた地図書、「連邦志略」を読んで、国家ありきの日本とは異なり、アメリカは初めに国民ありきで、国家の最高責任者である大統領を国民が選ぶということを知り、「頭から脳髄がとろけ出る程驚いた」と書き記しています。
そして、是非、このことを自分の目で確かめてみたいと、好奇心を抱き、国禁を犯してアメリカへと渡ります。新島先生の夢は、それだけでは留まりません。アメリカやヨーロッパで学び、キリスト教徒となった先生は「教育こそ文明の源である。日本でキリスト教主義の学校を設立し、自由と良心に立脚する人物を養成したい」という夢を抱いて10年振りに帰国し、1875年、同志社大学の前身である同志社英学校を設立しました。さらに、新島先生は、学校を発展させ、多くの学部を擁する総合大学にしたいと、先ほど教頭が朗読しました「同志社大学設立の旨意」を全国に公表し、広く国内外の人々に大学設立への協力をよびかけ、大学設立の準備に奔走しました。先生は、大学の設立を目前に病に倒れ、志半ばにしてこの世を去りましたが、先生の「志」は賛同する人々によって、その後も受け継がれ、今日の同志社となりました。そして、今日、皆さんと出会うことができました。
今日から「志を同じくする同志」となった皆さん、同志社の「原点」である新島先生の「志」を受け継ぎ、しっかりとした夢や目標を持ち、志高く、ここ同志社香里で勉強にクラブ活動に大いに励み、有意義な学校生活を送ってください。教職員一同、皆さんの夢の実現に向けて、全力でサポートをしていきたいと思っています。
結びに、新入生の皆さんが実り多い学校生活を送り、洋々たる前途を切り拓くことを強く祈念しまして、式辞といたします。あらためまして、皆さん、ご入学、誠におめでとうございます。
高校入学式式辞
新緑が輝きを増し、すがすがしい春の風が吹き抜けていく今日の佳き日に、八田英二総長、理事長をはじめ、ご来賓の皆様、ならびに、保護者の皆様にご臨席を賜り、2022年度同志社香里高等学校入学式を挙行できますことは、誠に大きな喜びであります。ご臨席の皆様に厚くお礼を申し上げますとともに、304名の新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。心より祝福を贈りたいと思います。
皆さんは、突如現れた新型コロナウイルス感染症の影響により、大きな不安やストレスを抱えての新しい生活様式での日常生活、さまざまな制約を余儀なくされた中学校生活など、本当に辛く、大変な二年間だったと思います。このような状況にありながらも、皆さんは、逆境をはねのけ、進学の準備をしっかりとされました。入学に至るこれまでの努力に、深く敬意を表します。
今、新入生の皆さんの胸中は、入学の喜びと、これから始まる学校生活への不安の中に、将来への大いなる期待と夢で満ち溢れていることでしょう。この場にいることができるのは、皆さんのこれまでの努力の積み重ねのたまものであることは言うまでもありませんが、ご家族や周りの方々の支えや励ましがあってのこと、感謝の気持ちを忘れないでください。
さて、皆さん、「VUCA」という言葉をご存じでしょうか。「VUCA」とは、V「Volatility:変動性」、U「Uncertainty:不確実性」、C「Complexity:複雑性」、A「Ambiguity:曖昧性」の4つの頭文字をとった造語で、あらゆるものを取り巻く環境が目まぐるしく変化し、先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態を意味しています。元々は1990年代後半に軍事用語として発生した言葉だそうですが、2010年代に入ると 昨今の変化が激しく先行き不透明な社会情勢を指して、ビジネス界においても急速に使われるようになったようです。
今私たちは、いまだに終息の兆しが見えない新型コロナウイルス感染症の世界的流行や大規模な自然災害の発生、世界各国の政情不安、テクノロジーの急速な進化など、あらゆるものを取り巻く環境が複雑さを増し、将来の予測が困難な状況に直面し、まさに「VUCA時代」です。このような時代に対峙する皆さんに、身につけてほしいことを、三つお伝えしたいと思います。
まず一つ目は、「自らの頭で考える力」です。このコロナ禍をAIは予測できませんでした。AIは万能ではなく、これまでにない課題を解決することや、数値化できない人間の感性や経験に基づく創造的なアイデアを生み出すことができません。AIとの共存社会がやってくる中で、私たちは人間にしかできない「考える力」を高めていく必要があります。
二つ目は、「情報収集と知識の習得」です。知識量を増やすためには、色んなことに興味を持ち、答えのない問いに対して、正解を導き出す力を養わなければなりません。そのためには、ICTを活用し、情報を収集することは勿論のことですが、先人の知恵の結集である書物に触れ、深く、広い知識を得ることも大切です。
三つ目は、「明確なビジョンを持つこと」です。将来を予測するのが難しく、刻々と変わる環境の変化に柔軟に適応する必要があります。ビジョンを明確化できれば、環境が変化しても「目標のために取るべき行動」や「軸が通った判断」を下すことができます。
同志社を創立した新島先生は、少年時代に「ロビンソン・クルーソー漂流記」を読み、「神」の存在に興味を持ち、さらに、「外国に渡りたい。」「キリスト教を学びたい。」という思いを胸に、1864年、当時、鎖国していた日本から脱国し、アメリカへと渡りました。アメリカ・ボストンへ向かう途中、寄港した香港で、次のような漢詩を詠んでおられます。
男児決志馳千里 自嘗苦辛豈思家 却笑春風吹雨夜 枕頭尚夢故園花
意味は「大志を抱き、遥か遠くの地へ向かっている。自ら選んだ辛い苦しみである。家族のことなどは思っていられない。しかし、風が吹き、雨が降る夜には、故郷を夢にみることもあるだろう。」というものです。新島先生は、この詩のように「千里の志」に生きた人だと思います。生涯、明確なビジョンを持ち、夢の実現に向けて努力した人だと思います。だからこそ、先生の「志」は人の心を動かし、その後も脈々と受け継がれ、今日の同志社があります。
今日から「『志』を同じくする同志」となった皆さん、同志社の「原点」である新島先生の「志」を受け継ぎ、しっかりとした夢や目標を持ち、志高く、ここ同志社香里で勉強にクラブ活動に大いに励み、健康で有意義な高校生活を送ってください。
最後になりましたが、保護者の皆さま、改めまして、お子様のご入学を心よりお祝い申し上げます。誠におめでとうございます。これまで陰になり日向になって育てて来られたお子様が、義務教育を終えて晴れの高校入学を迎えられ、感慨もひとしおかと拝察いたします。お子様が、本校での様々な活動を通じて、自ら人生を切り拓いてゆく力を身に付けられますよう、私ども教職員一同、全力を尽くしてまいりますので、何とぞ本校の教育方針をご理解いただき、ご支援とご協力を賜りますようお願いいたしまして、式辞といたします。
2022年4月8日
同志社香里中学校・高等学校
校長 瀧 英次